SUS316L製 ブローダウンタンクによる応力腐食割れ対策|プレミアムショットピーニング

フェノール製造設備におけるSUS316L製ブローダウンタンク(70℃、塩化物イオンを含む廃水)の応力腐食割れ(SCC)対策として、プレミアムショットピーニングを施工しました。同様の環境条件下にあるタンク5基にも同様の施工を実施しました。

お客様の課題

機器の開放点検において、排水中の塩化物イオン(Cl-)の影響により、機器内面の溶接線に応力腐食割れ(SCC)が確認されました。

当初、SCCをグラインダーで削除し、必要に応じて当て板溶接補修を行う方針でしたが、溶接に伴うSCCの再発や既存の熱影響部での新たなSCC発生が懸念されました。また、塗装による環境遮断も検討されましたが、貯蔵されるフェノール廃水が溶解性を有するため効果が短期間で失われる可能性があり、恒久的な対策の再検討が求められました。

カンメタエンジニアリングの提案

SCC発生箇所の当て板補修では、溶接作業により引張応力が発生し、SCCの再発が避けられない問題があります。また、ディスクサンダー研削も火花を伴い、同様に引張応力を生じさせるため、根本的な解決には至りません。

下図はディスクサンダー(グラインダー)研削によってもたらされる引張応力を示した図になりますが、その表面には30kg/mm2(約300MPa)を超える引張応力を生じさせ、かえってSCCが発生しやすい状況を作り出してしまいます。

「ハンドグラインダーによるSUS304鋼の引張り残留応力の深さ方向分布と塩化物SCCの深さ」
竹本幹男 著書 「現場技術者のための応力腐食割れ」より

SCCは表面から発生する特性があるため、プレミアムショットピーニングを施工し、表面層の応力を引張応力から圧縮応力に転換することで、効果的な応力対策を提案しました。       

 結果

工事対応中に外面付属品の溶接熱影響によって内面側にSCCが発生したことは、内面側の熱影響部のみを考慮した従来のSCC対策が十分ではないことを示す貴重な教訓となりました。

この経験を基にお客様と協議を行い、検査範囲外であった外面の熱影響部全てをプレミアムショットピーニングの対象範囲に含めることで、より徹底的な耐SCC対策を実施しました。

その結果、18年が経過した現在においてもSCCの再発は確認されておらず、安定した運用が続けられています。