SUS316L製 球形タンク内の応力腐食割れ対策|プレミアムショットピーニング

お客様からの一通のメールをきっかけに、マレーシアで初めての耐SCCプレミアムショットピーニング施工を実現しました。この対応においても、日本国内と同様の高い安全性と品質基準を維持しながら、現地での作業を成功させました。

お客様の課題

マレーシアの合成ゴム製造会社において、既設SUS304製Cement Surge Tank 2基の内面赤道から上部にかけて塩化物イオン(Cl-)の影響によるSCCが確認されました。損傷が深刻であったため、タンクの更新が不可欠となり、SCC対策として材料グレードをSUS304からSUS329J4Lに変更する方針が決定されました。

しかし、当時ロシア・ウクライナ戦争の影響でSUS329J4L材を用いた機器製作が困難となり、やむを得ず材料グレードをSUS316Lに下げて製作することとなりました。この変更によりSCC発生の完全防止が懸念される中、弊社のプレミアムショットピーニングを適用することをご検討いただきました。

カンメタエンジニアリングの提案

お客様が計画されていたSCC防止対策は、SCC発生の三要素のうち「材料」の要因を取り除くため、耐SCC材であるSUS329J4Lへの変更でした。しかし、世界情勢の影響を受け、SUS329J4L材での機器更新が実現せず、SUS316L材での製作が唯一の選択肢となりました。

その結果、材料対策だけでは不十分であることが懸念され、メール受領当日の午後に急遽お客様とのWeb会議を実施しました。その中で、引張応力を圧縮応力に転換するプレミアムショットピーニングの技術説明を行い、この応力対策が最も安価かつ効果的なSCC防止策であることをご理解いただきました。             


 結果

今回の工事は、3ヶ月にわたる取り組みでありましたがその結果、タンク製作コストを抑えつつSCC発生の懸念を解消することに成功しました。しかし、長引く戦争による不安定な世界経済状況の影響を受け、お客様生産設備の停止が決定され、運用期間は短期間に留まりました。

それでもこのプロジェクトはマレーシア国における初の試みとして業界関係者や関係機関から注目を集め、弊社は日本国内と変わらない高い安全性と品質を提供することで信頼を得ることができました。     

                                                                機器保全の観点から、日本国内外でSCC(応力腐食割れ)対策として材料グレードを上げる方法が広く採用されています。これは、安全操業を確保する上で一般的かつ効果的な手段ですが、対象の材料が『腐食支配(減肉を伴う割れ)』ではなく『応力支配(減肉を伴わない割れ)』の場合には、現在の材質をそのまま活用しつつ、応力面での対策を検討することが重要です。 

                                                                 プレミアムショットピーニングによる引張応力の圧縮応力への転換は、材料を変更せずにSCC防止を実現できる有効な手段となります。このような応力対策は、コストの抑制に加え、持続的な安全性と信頼性を提供するため、保全の観点からも非常に有益です。是非お客様の環境に合わせた最適な方法としてご検討ください。